麦穂8月号巻頭言 掲示板 主任司祭 細井保路

2023/8/9

                掲示板                              細井保路(ほそいやすみち)  立ち止まって、教会の掲示板を眺めている人がいると、ちょっとうれしくなります。毎月掛け替えている聖書の言葉を味わってくれたいたらいいなと思います。以前には、マザー・テレサのことばを掲示していたこともあります。聖書のことばよりもわかりやすいという感想もありました。しかし、信者である私たちにとっては自戒のことばとして響きますが、通りすがりの人にはちょっと説教臭いのではないかと感じていました。その後はずっと聖書の言葉を掲示してきました。紹介したい聖句はたくさんあるのに、短い一節を切り取ると、意味不明になってしまうこともあります。残念ですがそういう箇所は選べません。小さい字で注釈でもつけようかと考えたこともありました。  以前のものを繰り返し掲示するという手もありますが、できれば新しいものを紹介したいという意地のようなものがあります。詩編のことばも紹介はしたいのですが、一部分をポンと提示するより、祈り中で静かに味わうのに適してると思います。あれこれ考えていたときに、ふと、八木重吉の詩を思い出しました。短い平易な言葉の中に神さまへのあこがれと信頼がにじみ出るような詩があったことを思い出しました。  さっそく大きな本屋さんへ出かけて行って、ちょっとショックを受けました。私の学生時代はもはや何十年も前ではありますが、その頃は、詩歌の書籍のコーナーはたっぷりと用意されていて、様々な詩人の本を読み漁ることができました。しかし、売り場は狭められ、新刊書以外はほとんど見当たらず、まるで文学はもう滅んでしまったかのような様相です。いつの間にかネット社会になって、本当に欲しい本は、ネットで探せばよくなったわけです。  そこで、久しぶりに、図書館へ行ってみました。幸運なことに金沢図書館にも「八木重吉全詩集2」という1冊が所蔵されていました。早速借りて読み始めると、ちょうど詩編をよんでいるような気分になる詩集でした。これからしばらく、八木重吉の詩を外の掲示板に貼りたいと思います。  掲示板には採用する予定のない詩ですが、ちょっと面白い詩なので紹介します。「神は愛である/生活は詩である/愛は神ではない/詩は生活ではない/しかも愛は神でありたい/詩は生活でありたい」

お知らせ一覧へ戻る