麦穂4月号巻頭言 ハナニラ 主任司祭 細井保路
2025/4/13
ハナニラ 主任司祭 細井保路(ほそいやすみち) 秋のお彼岸にヒガンバナが咲くように、春のお彼岸にはハナニラが咲き始めます。春分の日の朝、教会の庭一面に白いハナニラが咲くのです。ついこの間まで枯れ草しかなかったところに小さな白い花が群生し、風に揺れる姿は、確かに春が来たことを実感させてくれます。しかも春分の日の頃から咲くので、まさに復活祭を迎える気持ちを高めてくれる花です。 イエスさまが、復活なさったことを弟子たちに示されたのは、神の国があることを悟らせるためでした。神さまがすべてを救い上げてくださることを伝えるためでした。すべてを生かすためにご自分を虚しくすることで、神さまの姿を教えてくださったイエスさまは、その十字架の死を引き受けられる以前にも、いくつもの奇跡を通して、神の国を見せてくださっていました。 全てを救うという覚悟でイエスさまが立っておられるとき、それはつまり、神さまのご意思がこの世界に立ち現れているのですから、イエスさまがおられる場所こそは神さまが治めておられる場所(神の国)だったのです。だから、神に反するものは退散するのです。また全てを救うという神さまのご意思は、やさしい言葉で言えば、「みんなの幸せを願う」ということになります。だから、パンを増やす奇跡も可能なのです。そのことをイエスさまは、こんな言葉で表現されました。「わたしが神の指で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちのところに来ているのだ」(ルカ福音書11・19)。 神の国は来ているのです。しかし神さまは、この世の統治の仕方とはまったく異なる仕方で世界を治められるのです。支配する者は力を誇示し、自身の存在感を押しつけて来ます。そしてすべてのことを自分の手柄にしようとするのです。それに対して、神さまは、すべてを生かすために、ご自分を虚しくされるのです。奇跡で人を救っても、ご自分の力を誇示するためではないのです。最後の晩餐の時に、パンに自らを重ね合わせたイエスさまは、神の国(神の救い)を私たちが受け入れるまさにそのときに、私たちの体の内に姿を隠してしまわれるのです。 神の国がここにあると気づく瞬間に、神さまはどこまでも小さくなられるのです。イエスさまは弟子たちに、暫し復活なさった姿を見せ、「いつもあなた方と共にいる」と言い残して姿を隠されました。次の春まで地中に姿を隠すハナニラにイエスさまの姿を重ねて、復活祭を祝いたいと思います。