麦穂9月号巻頭言 ジンジャーの花 主任司祭 細井保路
2023/9/5
ジンジャーの花 細井保路(ほそいやすみち) 今年も、8月の後半から、庭の隅のジンジャーが香り始めました。夏の終わりに咲き始めるジンジャーの香りは大好きなのですが、夏も大好きな私にとっては、夏が終わってしまうことを受け入れなければならない切ない香りでもあります。以前は、散歩の途中で藪や道端にジンジャーの花を見つけて夏の終わりを惜しんでいたのですが、何人かの方から株を分けてもらい、去年からは、教会の庭で芳香を楽しむことができるようになりました。 白い花が一般的ですが、頂いた株の中に、黄色い花が咲くものがありました。幼稚園の子どもたちの虫取りのコースに植えてしまったため、去年は踏み荒らされて花芽をつけることができませんでした。今年は、踏まれないようにレンガで保護してやったので、9月に入ると同時についに花が咲き始めました。季節ごとに、約束通りに咲いてくれる花は、自然の一部である私たちを自然の懐に呼び戻してくれます。 1989年に東方正教会では、暦の始めの日にあたる9月1日を、「被造物のために祈る日」と制定し、さらに9月を「被造物の季節」として、現代的なエコロジカルな回心(人類が皆で共に暮らす世界という意識)を求める期間としました。これはキリスト教全体の運動となり、2015年からはカトリック教会もこれに参加するようになり、日本では「すべてのいのちを守るための月間」という名称になりました。 今年の「被造物を大切にする世界祈願日」のメッセージの中で、教皇様は、昨年カナダのセンタンヌ湖の湖畔で自ら語られた言葉を紹介しています。「どれほどの心が、人生の重荷を背負い、あえぎ求めてここにたどり着き、この水になぐさめを、前に進む力を得たことでしょう。ここでもまた、被造界に身を置く私たちに、別の鼓動が、母なる地球の鼓動が聞こえてきます。母の胎にあるうちから、赤ん坊の鼓動が母親の鼓動と調和するように、人間として成長するためには、私たちのいのちのリズムを、私たちにいのちをもたらす被造物のリズムと調和させなければなりません」。 自然界のリズムを感じ、そのリズムの中で自分の生活のリズムを整えるとはどういうことでしょうか。深くいい呼吸を意識することもその一つだと思います。