麦穂11月号巻頭言 三位一体のイコン 主任司祭 細井保路

2023/11/12

             三位一体のイコン                              細井保路(ほそいやすみち)  10月29日に司教様をお迎えして、温かい雰囲気の中で堅信式が行われました。堅信の準備のプリントで、「三位一体」についての説明をしました。その個所を皆さんにも読んでいただきたいと思います。 「もう一度神さまの働きを思い出してみましょう。 神さまは、私たちに愛に満ちたいのちを与えてくださる。(父) 神さまは、イエスさまの姿で、復活なさって今も共にいてくださる。(子) 神さまは、自由に無条件に働いてくださる。(聖霊)  唯一の神さまは、同時に3つの働きのうちにおられるのです。これが三位一体の意味です。このことに気がつくと、入信の秘跡についても理解が深まります。「洗礼」は、父である神さまからいのちと恵みをまっすぐに豊かにいただけるよう関係を正すこと。「聖体」は子である神さま、イエスさまが示してくださった「神さまはいつも共にいてくださる」ということを味わうことです。決して見捨てられないというばかりでなく、神さまの内でいつも皆がひとつであるということにも気づかされます。「堅信」は聖霊の働きを受け入れ、自覚的に神さまの子どもとして生きることなのです。」  堅信式の記念品として、「三位一体」の絵の小さな置物を選びました。15世紀のロシアの画家アンドレイ・ルブリョフの傑作といわれるイコンです。絵のモチーフは、食卓に着く3人の天使です。そしてそれは、創世記18章のワンシーンなのです。アブラハムのもとへ、イサクの誕生の予告にやって来る3人の神の使いの話です。絵で表現することが不可能な三位一体の神さまを、一つの食卓を囲み、一つの意志を持つ3者を描くことで象徴的に表現したのです。  もともと聖セルギイ大修道院のために描かれたこのイコンは、16世紀には保存のため金で覆われてしまい、20世紀初頭にやっと修復されます。しかし、ロシア革命を経て、1929年にはトレチャコフ美術館に保存されるようになります。ところが、今年6月、プーチンの指示でウクライナ侵攻を支持するモスクワの大聖堂に飾られることになったというニュースが流れました。保存状態を危ぶむ声が上がり、公開は短期間で終わったそうです。詳細はわかりませんが、宗教的な心情を政策に利用するようなことはあってはならないことです。  芸術作品は、祈りや黙想の入口に過ぎませんが、そこから広がる神さまの世界は無限に広く大きなものです。

お知らせ一覧へ戻る