麦穂6月号巻頭言 ベルガモット 主任司祭 細井保路

2024/6/16

            ベルガモット                          主任司祭 細井保路(ほそいやすみち)  6月に入り、庭のベルガモットが一斉に咲き始めました。ベルガモットというと、紅茶のアールグレイの香りづけに使うオレンジの葉を連想する人が多いと思いますが、オレンジの木ではなく、鮮やかな赤い花を咲かせるハーブです。最近は、モナルダという学名で呼ばれることが多いようですが、ベルガモットに少し似た香りがするところから、そう呼ばれるようになったそうです。和名はタイマツソウ。花が炎のように見えるからです。  この花に初めて出会ったのはもう40年近く前ですが、八ヶ岳のペンションの庭に咲いていました。人の背丈よりも高く茂っていて、一斉に鮮やかな深紅の花を咲かせていました。緑に囲まれた庭の一角に群生していて、大きなエネルギーを発散しているように感じました。いつか庭のあるところに住んだら、この花を植えてみたいとそのとき思いました。そして、やつと念願がかなって、おととし3種類の苗を植えました。白と牡丹色がかった赤と、ずっと以前に山の中で見た鮮やかな赤の花が咲きました。しかし、1年目は、株も大きくならず丈も伸びなかったので、ちゃんと花を咲かせてはくれましたが、なんとも迫力のない姿でした。去年は、なぜか白の株が優勢で、他の色はあまり咲きませんでした。そして、今年は白の花が出て来ない代わりに、牡丹色の花の株が大きく成長して、みごとに咲き始めました。一番咲いてほしい色はどこかへいってしまったのですが、来年はきっと、私が思い描いているのに近い光景を作り上げたいと思っています。  私は、この花が群れて咲いている様子を見て、勝手に聖霊降臨の出来事を連想しています。聖霊降臨の日の出来事はこう記されています。「突然、激しい風が吹いて来るような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。そして、炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、霊が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした」(使徒言行録2・1~4)。ベルガモットの花は、「炎のような舌」という表現にぴったりです。人の頭上にこの花が咲いている様子を想像してみると、まさに、聖霊である神さまが、自由に私たちを通して働いてくださるのだと実感できます。かの日の弟子たちだけではなく、街を行くすべての人の頭上にも、ベルガモットの花が咲いている情景を思い描いてみましょう。お互いの頭の上に深紅の花が咲いていることを認め合うのはとても楽しいことです。

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