麦穂7月号巻頭言 ルリマツリ 主任司祭 細井保路
2024/7/9
ルリマツリ 主任司祭 細井保路(ほそいやすみち) 庭にルリマツリを植えようと決めたのは、近所のお宅の塀からこぼれるように咲いていたルリマツリの花に、オオスカシバが蜜を吸いに来ているのを度々見たからです。この虫を子どもたちに見せたいと思ったのです。オオスカシバはスズメ蛾の一種なのですが、羽化した途端に翅の鱗粉を払い落とし、透明な翅になってしまうという不思議な蛾です。胴体には色鮮やかな縞模様があって、私は見つけるとなんだかとても嬉しくなるのですが、意外に目撃されていないようなのです。ですから、是非、子どもたちに見せたいと思ったのです。しかし、あとで調べたら、幼虫はクチナシの葉を食べるそうなので、クチナシを植えた方がよかったのかもしれません。しかも、特に好んでルリマツリの花に飛んで来るというわけでもなさそうです。結果的に、ルリマツリは見事に根付き、うっとうしいほど茂り始めました。そして、たまにはオオスカシバも飛んできてくれます。 花壇を作り始めた頃、シジミチョウが多いのが不思議だったのですが、カタバミを好む蝶だとわかり納得しました。アシタバを植えたら、すぐにキアゲハの幼虫がつきました。それぞれの虫が好む植物があれば、そこに虫は集まってくれるのです。 子どもの頃、隣りの農家のお宅との境に大きな榎(エノキ)が2本生えていました。榎の上の方にはタマムシとゴマダラチョウが住み着いていました。下から見上げても、どこにいるのかわからないのですが、虫網を持って木の下に立っていれば、必ずヒラヒラと舞い降りて来てくれました。 これからの季節、子どもたちが花壇でたくさんの種類の虫を追いかけることができるように、植える植物のことも考えているのですが、そこで改めて気づいたことがあります。植物の葉は食い荒らされるということです。虫食いの葉は見栄えはよくありませんが、集まる虫たちは豊かになるのです。貧しさを受け入れることが本当の豊かさであり、そこに「幸い」があるということを自然が教えてくれているように思います。 詩編37の言葉が思い起こされます。 「神に従う人のわずかな持ち物は、神に逆らう者の富にまさる。 神に従う人は惜しみなく人に貸し、その子孫は祝福される。」 (詩編37・16、26)