麦穂9月号巻頭言 アサガオ 主任司祭 細井保路

2024/9/8

               アサガオ                         主任司祭 細井保路(ほそいやすみち)  夏の暑さも乗り越えて、天使幼稚園の年少組が育てているアサガオが、まだ花を咲かせ続けています。ある朝、アサガオの蔓の中に、ユリのような花が咲いているのに気がつきました。それは、毎日増え続け、なぜか白い花だけがはっきりと五弁に分かれるのです。よく見ると、花の中には小さな虫がいました。その虫が芸術的に花を食べていたのです。アサガオの花のちょうど傘の骨のような部分だけを食べ残しているわけで、やわらかい美味しいところだけを食べているということなのかもしれません。いわば害虫なのですが、造形的にはなかなか捨てがたいものがあります。  子どもたちと一緒にいると、いやでも小さな世界に導かれます。レイチェル・カーソンが書いた『センス・オブ。・ワンダー』(1996年新潮社刊)という本は、そのことの大切さを語っています。  「子どもといっしょに自然を探検するということは、まわりにあるすべてのものに対するあなた自身の感受性にみがきをかけるということです。それはしばらくつかっていなかった感覚の回路をひらくこと、つまり、あなたの目、耳、鼻、指先のつかいかたをもう一度学び直すことなのです。・・・たとえ、たったひとつの星の名前すら知らなくとも、子どもたちといっしょに宇宙のはてしない広さのなかに心を解き放ち、ただよわせるといった体験を共有することはできます。そして、子どもといっしょに宇宙の美しさに酔いながら、いま見ているものがもつ意味に思いをめぐらし、驚嘆することもできるのです。  ごく小さなものたちの世界も、関心をもつ人はほとんどいませんが、とても興味深い世界です。子どもたちは、きっと自分自身が小さくて地面に近いところにいるからでしょうか、小さなもの、目立たないものをさがしだしては喜びます。そのことに気がついたならば、わたしたちがふだん急ぐあまりに全体だけを見て細かいところに気をとめず見落としていた美しさを、子どもとともに感じとり、その美しさを分かちあうのはたやすいことです。」  分け入り難い山奥を目指すまでもなく、小さなアサガオの花弁の奥にさえも不思議な世界はあるのです。身近な小さなことがらを、壮大な神さまのはからいに出会う入り口にしましょう。

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